礫を向ける先は・・・

ロシアがウクライナに侵攻して、一週間ほど経ち、日を追うごとに状況が緊迫し、悪化し、落ちついていられない日々が続きます。爆撃音と同時に燃え広がる紅蓮の炎と煙、泣叫ぶ子供や老人の顔、胸がドキドキして居ても立ってもいられません。ニュースの画像と言葉を前に固唾を飲んで今を見つめます。早く戦火がおさまりますように、これ以上悪化しませんように。

こうした状況のなかで、避難する人々も国を出ない、また出られない人々も、なんと苦しい時間を耐えていることだろうかと思います。国外に避難した人々も郷里を思い、郷里に残る人々を思い、いつまた帰れるやら見通しのつかない日々を思い、心の痛むことでしょう。世界の多くの国では戦火に襲われるウクライナの人々を思い、様々の支援を試みています。日本でも多くの人々がウクライナへの人々に心を合わせ、それぞれの立場でできることをしようとしています。

こうした中で気になるニュースがあります。日本に滞在しているロシアの人々に対する悪意です。的になっている多くのロシア人は、日本で何年も暮らしてきた人たちだそうです。そのなかには、ウクライナ出身ですがロシアの店名をつけている店主もいました。他国で暮らし、平穏な日々を送っているときに突然襲った戦火のニュースに、故国に残してきた家族や親類の人たち、友人知人のことを思い、さぞ心を痛めていることだろうと思います。日本で暮らし、日本になんの敵意も悪意ももたないこの人たちに、プーチン大統領に向けたい批判の鬱憤をはらすのはまったくもって間違っていることですし、人として、決してしてはならないことはいうまでもありません。

こうしたことは、戦争や大事件が起こるとしばしば見られることではありますが、決してあってはならないことと怒りがこみあげてきます。図らずも戦争が起こり、敵国に暮らす人々がどんな思いで暮らしているのか、もしそれが自分自身だったらどうであろうか、考えてみればわかることだと思います。最近のネット炎上も含め、決してしてはならない一線をこうも易々と越えてしまうことに恐怖と怒りを覚えます。

今、するべきことは、戦いの火が消えることを願いつつ、冷静に、落ちついて事態を見つめ、今できることを一つずつして行くことではないかと思います。こうした状況で、無辜の人たちに刃を向けてはならないということは、肝に銘じなければならないことです。日本の各地で行われたこのたびの戦争反対のデモの参加者には、在日のウウライナ人もロシア人もいました。誰もが戦争に反対しているのです。鬱憤を、いわれのない理由で、日本で暮らすロシアの人に向けてはならないことです。

こんな時こそ、助けあって、戦いの終結を祈り、その先にできる援護のあり方を考えるべきではないかと思ったことでした。