お山は今・・・

 しばらくブログをお休みしていました。心に思うことはたくさんあったのですが、言葉になりませんでした。カルチャーセンターの受講生の一人が、コロナ以来の様々な出来事で心が萎え、自然災害の多さと悲惨に人災が加わり、その上ウクライナ侵攻やら、低年齢の子供の死が続き、心が痛みすぎてクラスにも来られないほど・・・、と嘆きました。ああ、私もそうだった、と思いました。意気地のないことに、毎日、最低限度の「ねばならない」ことを済ませると、それ以上のことに心が向けられなくなりました。それにすら気づかず、無為徒食の日々を過ごしてきたのでした。その方のお陰で、自分自身の心の今の姿が認識でき、再スタートをきる方向に心を向けることができました。

 というわけでまた山にやってきました。9月は月端に一度、数日来たきりで、その後は台風やら何やらあって来られませんでした。こちらはお盆を過ぎると秋ですから、9月は秋深し、10月は冬が始まっています。

 以前は中央道で、東京、山梨、長野を経由して来ていましたが、このところは関越、長野自動車道、中部横断自動車道と、東京、埼玉、群馬、長野経由で佐久までやってきて、そこから小海経由で川上村に入ります。中央道も両側が緑と山と空が広がり、富士山も見えて素晴らしい景観ですが、関越経由はまた違った風景が楽しめます。横川辺りから、浅間山のなだらかで大きな姿が目の前に広がり、この付近の人たちには「これぞおいらのお山」なのだろうと思います。隣に見える不思議な形の妙義山も魅力的です。遠くから灰色がかった薄青色の形を見ていますと雲なのか山なのか一瞬戸惑います。長野に入りますと八ヶ岳です。近づくほどに3000メートル級の山々が村を取り囲み、圧倒されます。この辺りの人にはこれが「お山」なのでしょう。

 中部横断自動車道はいまだ未完成です。途中から一車線対面交通になりますので、そこからは無料です。来る度に工事をしていますから、完成は遠い日ではないかもしれません。太平洋と日本海を繋ぐこの道路が完成しますと、4時間で横断できるそうです。太平洋側は静岡県の新清水スタートですが、日本海はどこが到達点なのでしょう。おそらく新潟県あたりに続くのではないかと思うのですが。

 この道路の景色が素晴らしいのです。高架になっている道路の両側の眼下には広々と畑地や人家が見え、さらに遠くに緑の木々のベルトがあり、それらを囲むように山々があり、他はいっぱい、いっぱいの空です。道路の両側は、夏は緑の垣根か土手ですが、夏頃から薄の群生で、今は穂の開いた銀白色の薄の群は道路の縁飾りのように密生して風に揺れています。両側の薄の縁飾りに歓迎されているように車は走ります。今はまだ混雑も渋滞もない長閑な道路です。

ふと、高速道路が多いなと思い、日本の高速道路網を見ると、まさに網目です。電車が、特急と言えば次第に新幹線に集約されていき、かつての文字通りの特急はローカル特急になっていくように、道路も高速道路になって、一般道路はローカル道路になっていくのでしょうか。各駅停車の電車が好きな私は新幹線に統合されていく鉄道にも寂しさを覚えますが、こんなにも高速道路が増えていくのもなぁ、とも思います。日本は首都圏や大都会を中心に、高架の一般道路や新幹線、平地の一般道路やローカル特急や各駅停車、地下を走る鉄道や自動車道と3重構造になっていくのでしょうか。

地下があれば、ミサイルが飛んできてJ-アラートの時に役に立つかもしれません。ただ、ミサイルのスピードに間に合うのでしょうか。東京にいても、例えば西荻窪に避難所になるような地下も堅固な建物も近くにはなさそうです。それ以上に、地方の多くに、避難先になるような地下の設備があるのかと思いました。放送では、地下がないときには他の場所へと言っていたように思いますが、都市部を離れた地方にその様な設備がある所ってどこだろうと思いました。

ともあれ、やって来た道々の大らかな美しい景色を胸に、暫し今は、優しい思いを育もうと思ったことでした。