立春を過ぎて、雪まで降り、寒さは一段と厳しいものがありますが、夜明けが少しずつ早くなり、日暮れもゆっくりやってくるようになりました。木の芽も花芽もずいぶん大きくなりました。猫柳に似た木の芽は触れるとすべすべと柔らかく、暖かい春の陽射しを浴びたいことだろうと思いました。
我家も少し春めいて、床の間の掛軸を春らしいものに変えました。節分を過ぎて、時間はしっかりと前を向いて進んでいます。そのなかでたった一つ、お正月の名残を残しているものがあります。スパイスの瓶に飾ったカーネーションと葉牡丹の孫です。
松の内を過ぎてお正月の花はみな萎れてしまいました。花を飾り変えているとき、カーネーションの茎から分かれた細い茎にしっかりしたピンクの蕾がついていました。それから葉牡丹の子供みたいな花(?)の先が、まだまだ黄緑色のきれいな葉で、これを始末してしまうのは気が咎めました。そこで、スパイスの瓶の登場です。カーネーションと葉牡丹の孫を、短い間なりとも、眺めていたいと思ったのです。
ところがです。一月も過ぎて、立春も過ぎたのに、まだ元気です。葉牡丹の孫は外側から一枚一枚、葉がカラカラに乾いて落ちていきますが、芯の所から新しい葉が一枚一枚開いていくのです。カーネーションはかなり固い蕾でしたが、なんと、開きはじめたではありませんか。水もたくさん吸っています。こんな細い茎でがんばって生きようとしているのですね。なんと健気で偉いのだろうと、励まされる思いがします。足もとを見つめて、堅実に一日を生きる大切さを改めて思いました。