コロナの日々が続く中で、人の心は逼塞し、ともすると落ちこみそうになりますが、自然は人の心のありようにかかわらず、季の移りを知らせてくれます。この数日、柿の実の赤味が増し、楽しみにして毎日眺めていましたが、とうとう、最初の収穫がありました。
初夏のころにはびっしりと花が咲き、やがて小さな実がつき、今年は生年かしらと楽しみにしていました。たくさん実がなる時は200個以上の収穫があり、吊るし柿にしてはお好きな方にもお裾分けができました。一昨年は不作で、去年は改築のため十分な収穫ができず、今年はどうかしらと見上げては、いっぱい実をつけてね、と声をかけていたのです。
残念ながら柿の数は平年よりはかなり少ないようです。その代わりいい色で大きな実ですが。ともかくも20個ほど捥いでみました。
蜂谷という渋柿です。渋柿は渋を抜いて甘くして食する方法もありますが、私が好きなのは熟柿にして冷やしてスプーンで掬っていただく方法です。渋抜きはアルコールを吹きかけて密閉容器に入れてしばらくすると甘くなります。
熟柿はお皿などに入れてただ時を待つだけです。渋柿は甘くなるといわゆる甘柿よりもずっと甘いのです。
イタリアに柿をもたらしたのは天正遣欧使節だそうです。秋になるとあちこちのスーパーに柿が並びます。だいたい熟柿で売られています。英語で柿は "persimmon"ですが、イタリアでは「KAKI」呼ばれます。売られているイタリアの柿は、どうもみな渋柿のようです。そもそも柿はみな渋柿で、甘柿の種を蒔いても渋柿の実がなるのだそうです。甘柿にするには接木をしなければならないそうです。
ローマにいたとき修道院にお招きを受けてご馳走になり、ついでに柿捥ぎをしたのは楽しい思い出です。その時たくさん実をいただきましたので、同居していたお嬢さんが、柿ジェリーを作ってくれました。
さて、柿の実はあと少しは取れそうです。吊るし柿もほんの少しはできるかもしれません。今までは二階でしたので吊るす場所は屋根の下で丁度よかったのですが、今年はどうしましょう。洗濯物を干す小さな吊るし場にでも干しましょうか。風量や気温がうまくいくかどうかわかりませんが。
捕らぬ狸の皮算用ならぬ、吊るさぬ柿の心算です。