年は移り…

あけましておめでとうございます。

 年が明けたとたんの大きな地震に、「お正月早々」と胸が潰れる思いがしました。外国の友人からも心配して地震お見舞いのメールが届きました。かの地はつい先頃も災害に見舞われた地域の近隣ではなかったかと胸が痛みました。この寒さの中で、どうか皆様ご無事で、と祈るばかりです。

 お正月は一年の始まりですが、この頃は一年の終わりに心深く感じるものがあります。コロナの数年の日々、70歳後半に入ったことなどと関係があるかもしれません。なによりも、私の同時代の方ばかりでなく、私よりはるかに若い方々の訃報が届くことが多くなりました。ニュースや新聞で知る著名人や芸能界の方々の訃報に、一つの時代が、ゆっくりとから少しずつ急ぎ足になって、遠ざかっていくのを感じます。

 西荻窪で暮らして50年以上になります。駅の南側は早くから開けていたそうですが、私の住む北側は駅近くに西友があるほかは、バス通りの西荻北銀座通りに商店街があるくらいでした。数年後、北側右手に大きなビルが建ちました。一階はサンジェルマンのパン屋さん、二階はサンジェルマンのカフェ・レストラン、三階以上は美容院やオフィス。ピカピカのきれいな七階建てのビルでした。南側の老舗のこけし屋さんのケーキと喫茶店、レストランと合わせると、西荻窪でもちょっと贅沢なランチやディナーができました。二階のサンジェルマンは数年後ファミリーレストランのジョナサンに代わり、さらにその後ガストに代わりました。サンジェルマンは一階のパン販売の一部がカフェになりました。一階も二階も、なかなかの人気でした。一階は若い人も多いのですが、中高年以上の方が多かったようです。

 二階は子供も大人も、家族そろってニコニコ、ワイワイ楽しそうでした。最後の数年間、猫ロボットがお料理を運んできたり、お片付けに来たり、なかなか好評でした。同じグループ企業ですが、スカイラーク、イエスタデイ、ジョナサンに比べるとガストはその次かな、という感じでした。が、まずはイエスタデイ、続いてスカイラークが姿を消し、されにジョナサンが少なくなりガストに統一されていくなかで、ガストのメニューも豊富になり、お味もレベルアップし、猫ロボットという新兵器も出て、人気のあるファミレスになりました。

 時は経つものです。しばらく前にこけし屋さんが閉店し、「三年後の再開を目指します」とのお知らせが張られました。秋口から工事が始まり、どうやら三年後には再開の運びとなりそうです。一方、こちらのビルは夏過ぎから三階以上が空家になりました。どうしたのかな、と思っていましたら、12月24日にガスト閉店の張紙が貼られました。また、サンジェルマンの店内に「46年間のご愛顧に感謝します」の横断幕が掲げられました。ビル全体が空っぽになるのですね。そうなりますと駅すぐ傍で、カンパーニュとかバタールなどのパンを買えるお店は西友の奥にある一軒だけになり、ファミリーレストランは一軒もなくなります。12月中旬にはガストファンの友人と昼食をし、30日にはサンジェルマンでフランスパンなどを買い求め、夜はパン食にしました。

 そうか、あれから46年も経ってしまったのですねぇ。サンジェルマンの二階のカフェ・レストランで、ロールサンドにコーヒーでランチを楽しんだころを懐かしく思い出しました。

 思えば駅近くの建物はかなり長い間変わりがありませんでした。私自身も経年劣化であちこち故障がでて医者通いの日々となりましたが、町並みも同じなのでしょう。人間の身体に再開発というのはありませんので、この身をいたわりながら頑張ってもらうしかありません。ですが、街には再生が可能です。いよいよこの町も再開発の時を迎えようとしているのでしょう。これまで何も考えずに馴染んできた町並みでした。こんなにも気持ちよく暮らさせてくれたことを喜び感謝し、古い街並みとお別れをする時が来たのかもしれません。 

 2023年の一年は世界中に苦難の多い一年でしたが、2024年はどんな一年になるのでしょうか。年初めの大地震で始まった一年が、どうか穏やかな、災いの少ない日々でありますようにと心から祈りたいと思います。