'23年 山の実り

今年は5月以来天候不順の日々が続き、台風襲来のたびに各地に大雨の日々と大被害をもたらし、さらに猛暑酷暑が続き、息苦しい日々を喘ぎ喘ぎ生き延びた夏でした。例年並になってしまった異常気象でしたが、今年はさらに異常な日々で、この先もずっとこうした夏を迎えるのだろうかと、暗澹たる思いに襲われました。

 それでも秋が来るのですね。今夏、いつもなら喧しく鳴きわめく蝉の数が少なく、虫の音も細々でしたが、9月過ぎから彼らは悲鳴のように鳴き叫んでいます。ほとんどは蟋蟀と鉦叩きです。10年前には轡虫、螽斯、鈴虫の音も聞こえました。今は聞かれません。ひと頃、青松虫という外来種が大きな声で歌っていました。声はきれいですがあまり声量がありすぎて、ほかの虫の音が消されてしまいそうになるのが残念でした。この数年その青松虫の音も聞かれません。この辺の自然に、なにか異変がおきているのでしょうか。

 そんなわけで今年はあまり山には行けませんでした。それでも去年の経験が生きて、いくばくか秋の実りを手にすることができました。

小さい実がびっしりです。近くの広場の脇に一本の葡萄の木が数本の別の木の幹や枝に絡みついています。これはほかの人も採るので、収穫量は運次第です。

 まずは山葡萄です。昨年は収穫が少なかったのですが、今年はその3倍くらい実が取れました。それでジュースを作りました。実を絞り、煮沸し、漉します。市販の葡萄ジュースより渋みと酸味が強く生のままでは飲めません。ほどほどに薄め、羅漢果(砂糖の代わり)とレモン汁で味を調えます。山の味がします。あっという間になくなりました。

少し乾いていますが、木になる実の姿がこれです。大体三方向に角のように実の端が伸びています。その中央に角の数だけ実をつけます。

 もう一つは角榛です。去年はタイミングが合わず、食することのできる実は取れませんでした。今年は一杯取れました。毛羽だった外皮を外し、硬い殻に包まれた実を取り出します。殻は胡桃割りで割って中身を取り出します。外見は直径6-8センチ位です。

これが外皮を外して取り出した殻付きの榛です。この殻を外すとおいしい実になります。

殻付きで1センチ弱、胡桃割りで殻を外すと6-8ミリです。殻は固いし小さいので、上手に殻を壊すのは手間がかかります。でも、殻からでてきた榛の実はそのままでもおいしいです。でもこれを弱火で軽く煎りますと、香ばしく実においしいのです。

 今年はあまり山に行けないうちに山の家シーズンは終わりになりそうですが、榛の実を噛みながら来年はもっとたくさん山の生活を楽しみたいなと思いました。