山で見つけたもの(その3)

お盆休みを利用して、今回はゆっくり山で過ごしました。東京の気温は連日36℃前後、蒸し暑く、出かけるのも、家で大人しくしているのも、それなりに大変でした。山の温度は東京と約10℃異なります。お盆前の村はレタスの栽培、収穫に大忙しでした。お盆休み、行動制限がない夏というわけで、あちらこちらで、帰省、行楽という時期に、村中は汗水たらしての毎日です。お陰でおいしいレタスがいただけますが、ちょっと申し訳ない気持ちも・・・。

東京を出て、佐久を過ぎて野辺山辺りになるとだいぶ涼しくなってきます。さらに山近くなると、空は高く、青くなります。空の青さも秋の気配ですが、そこに浮かぶ雲もそろそろ秋の風情です。土手の薄がそよそよ吹き渡る風に揺れていました。女郎花も一杯咲き乱れていました。こちらはもう秋です。

 

道端の薄です。もっと、もっと、土手を覆いつくすほどの群生になるのはあとすこしでしょう。いつもなら、土手の道際に撫子や桔梗が咲いているのですが。

山の家の外階段脇にミヤマモジズリ(深山文字摺)が咲いていました。

初めて見たとき、きれいだな、と思いました。来る度に楽しみですが、今年は見えないのでどうしたのかしらと思いました。鹿が・・・と知って、本当に切ない。でもこんな風に咲いてくれて嬉しいです。

高さは10-20㎝くらい、花は淡い紅色、姿が少しモジズリに似ているので深山文字摺と言われるそうです。7ー8月に咲きます。可憐なきれいな花ですが、鹿もこの花が好きらしくあまり見られません。残念です。これは食べられてしまった後にまた芽を出して咲いたようです。

散歩をしていたらツリフネソウに会いました。

珍しく仲良しこよしで咲いていました。一つだけで咲いていると、少し寂しそうですが、仲良しこよしで咲いていると、小さいお友達に「こんにちは!」と声をかけてもらっているような気になります。

以前、京都の貴船に行ったときに見た黄色と紅色の釣船草の群生を思い出しました。これも鹿は食べるのかも知れません。撫子、桔梗、松虫草など、秋の花が皆いなくなりました。みな鹿の胃袋の中でしょうか。あんなに可愛い顔をしているのに、あんなに円らな瞳をしているのに・・・。

薄まで貪欲に食べてしまう鹿が食べないので、お陰でこの夏たくさん見ることができたのがイケマ(牛皮消)です。

イケマと言う名前は耳馴染みがなく、不思議な響きがしました。アイヌと関わりが深いようです。毒性の部分を何かの処理をして護身用に持ち歩く習慣もあったらしいと説明がありましたが、確かめていません。ですが、アイヌの言葉からこの名前が来たという由来には納得です。

イケマは夾竹桃の仲間ですが、こちらは蔓植物で、あちこちに、いえ、どこにでも巻き付きます。巻き付く草木がないと地面や石垣に絡みつきます。2ー5m位の高さになるそうです。葉の形は卵形の対生で、その真ん中に小さい花が固まって球形に咲きます。可愛い花です。花が終わると、オクラに似た実がなります。毒草だそうですが、生薬にもなり、根にはアルカロイドの毒性があるので要注意とのこと。学名のcynanchumhaは「犬を殺すもの」という意味だそうです。イケマという名はアイヌ語で「それの足」、「それ」とはカムイ(神)の婉曲な言い方だそうです。若芽と5㎝位までの実は、お浸し、卵綴じ、天麩羅、バター炒めになるとの紹介文がありました。根も焼いたり煮たりして食べられるそうですが、生煮えだったり食べ過ぎると中毒するそうです。

食用の草木といえば、この時期、独活の花がおいしいです。

道端の独活に花が一杯ついていました。今晩、天麩羅で食べようと思って一枝採ってきました。いただいたらあんまりおいしいので、もっと採ってくれば良かったと思いました。次に来たときには花はもう固くなってしまい、食用としては時期が過ぎているかもしれません。また来年でしょうか。来年がありますように。山菜の時期は本当に短いです。

これはなんといっても天麩羅がおいしいです。山菜らしい香りがなんともいえなせん。平地の独活も同じでその花もおいしいそうですが、庭などで独活を見たことがありません。私たちが毎年いただいている独活は畑で作られているのでしょうか。平地に咲く独活の花が見たいと思いました。

もうすぐ食べごろを迎えるのはツノハシバミ(角榛)です。

 

造化の神さまは面白いものを生み出します。なんて面白い形の実でしょう。この三つの角の袋のそれぞれに榛に似た実ができるのです。一つ採って囓ってみましたが、まだ固くて歯が立ちませんでした。

写真の実はまだ乾燥が足らないせいか、まだまだでしたが、もう少ししたら実が食べられます。榛と似た味だそうです。あちこちにこの木を見つけたので、今度、たくさん取れると良いなあ、と思って楽しみです。

山葡萄もあと少しです。

 

山葡萄の実がなりました。まだ青いです。もう少し熟れると食べられるようになりそうです。定住者の中には、庭に棚を作って山葡萄を育てておいで方もいらっしゃいます。大変おいしいそうです。

これも山葡萄です。葉が少し黄葉しています。もう少し経つと山はあちこちの葉がこの色になります。秋ですね。

イソップの、狐が届かない葡萄の実を見て「あれは酸っぱい」と言って諦める話に出てくる葡萄は山葡萄でしょうか。もしそうなら、あれは酸っぱい葡萄ではなかったのかもしれません。もしそうなら狐がちょっと可哀想です。別の場所で、届く所に実っている葡萄が見つかると良かったなぁ、と思ったりします。食いしん坊なので、食べ損なった話しは、狐でも同情します。

東京に戻り、一夜明けましたら、朝顔が咲いていました。

よく見る朝顔より花が少し小ぶりで、薄青い花の色がきれいです。お日様が輝く頃になると萎んでしまうので、この花を毎日見ているのは私だけです。皆は萎みかかった頃に起きてきます。

友人にいただいた種を蒔いてみたのです。正直に芽を出し、葉を出し、花がつきました。朝早くに咲き、暑くなる頃に萎んでしまいます。東京も夜には虫も鳴き始めました。お山だけではなく、東京にも秋は忍び寄ってきているのですね。暑い、暑いと思っていましたが、夏もそろそろお終いでしょうか。少し寂しいです。