真紅の薔薇

あけましておめでとうございます。

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真紅の見事な薔薇です。玄関に飾りました。玄関は二ヶ所窓が開いており、常に外気が入ってきますので、寒いこともあり、まだ元気です。少し開いて、花の一つ一つが大きくなってきました。背景の処理をしなかったことを反省!

クリスマス・イブに届いた薔薇がまだきれいです。玄関は寒いので長く持つのかもしれません。この薔薇は、東北大震災のときに事故を起こした原子炉にほど近い町から、ふるさと納税の返礼ですと送っていただいた花です。

釣りの好きな家人は、折々にその町の宿を拠点に釣りを楽しみ、帰りには釣果だけでなく農家の手作りの野菜や漬物を買ってきたものでした。漬物は本当においしく、野菜も新鮮で元気のいい物ばかりでした。ところが、忘れもしない、大震災に続く原子炉の重大な事故のため、その周辺地域の方々は故郷の地を離れざるを得なくなりました。何度か南相馬の支援ベースに留まり支援をしておいでの恩師を訪ねた折、周辺の様子を車で案内していただきました。常磐線の最寄の駅周辺には叩きつけられた自転車や自動車が、3年たってもそのままで、田畑には雑草が伸び、そこでひっくり返ったままの自動車のタイヤ付近にも雑草が風で揺れていました。その辺は海岸からは何キロも離れていて海はまったく見えませんでしたが、国道を越えて津波が襲い、田畑を塩水で覆い、家々を打ちのめしたのでした。かつて福島の湘南と言われ、マリンスポーツの世界大会も開催されたという海岸はズタズタで、見上げるような高さの所に架けられている歩道橋は真中で折れていました。ここには16㍍に及ぶ高さの津波が襲ったそうです。あちこちに放射線の汚染土の入った黒いビニール袋が積み上げられておりました。3年経っても、復興の足がかりすら見いだせなかったのです。

かつて楽しませてくれた地の大災害を思い、せめてふるさと納税を・・・と思いました。当時、オンラインで申し込める納税方はありましたが、その町はそのラインには入っておらず、役所に問い合わせて手続きをしました。もちろん、返礼品などは論外でしたし、そんなことを期待もしておりませんでした。ただ、お世話になったその地に少しでも何かが出来ればと思ったのです。

そして10年たった昨年12月、返礼品として真赤な薔薇が送られてきたのです。私はその薔薇の花束を本当に嬉しくありがたく頂きました。帰宅困難地域で、帰宅できるようになるまでに長い年月が経ちました。年月が経ち、帰宅したくとも現在の生活の基盤や状況では戻るわけには行かなくなっている方も少なくありません。それでも、帰宅できた方たちが力を合わせて、復興への道を歩み、花の栽培などの産業も興し、返礼品として花などが送れるようになった、ということが何よりも嬉しかったのです。飾った薔薇は誇らしげ顔を輝かせているようにに見えました。

ふるさと納税については、様々な問題もあるようで、あれこれ議論や方法の改訂などがありますが、基本は、その町を応援したいということではないかと思います。返礼品を廻っての問題は、返礼品欲しさに納税をするさもしさ、それを利用して商売をしようとする欲に問題があると思いますが、それをやめさせたいとの方策にも首を傾げたくなることがあります。ただ、税金の中から一部、心の故郷に納税ができるというのは、単なる寄付とも違った、その町と心がどこかで繋がっているような気持ちになれるよいやり方だと思えるのです。

というわけで、クリスマスに届いた薔薇は今もきれいに玄関で「行ってらっしゃい、」「お帰りなさい」と声をかけてくれます。そのたびにあの町の人たちが、この寒い中でも、元気にがんばっていると思って、心があったかくなるのです。