お勉強その2

 昨日のブログの続きです。昨日はなぜか絵をアップさせることができませんでしたが、今日、気を取り直してもう一度試みましたら、なんと、上手くいきました。(メデタシ、メデタシ。)3人でいただいたワインが大変美味しかったので、思い出して描いてみたのです。 

f:id:kittozutto:20210503094409p:plain

その日のワインはブルゴーニュ。明るく静かなレストランは結果的に貸し切りになりました。メニューに合った美味しいワインは四方山話の良き友でした。「近いうちにまた」と言ってお別れしたのですが、あれ以来、月日が流れ、コロナの日々ともなり、まだお会いできません。早くその日が来ますようにと、心から待ち遠しいことです。

 ご一緒した同僚のE先生はアメリカ人で、勤務校の大学の交換留学先のリンフィールド大学で英米詩を教えておられ、先生ご自身が詩人でした。先生のおかげで、国内外の詩人にお会いでき、お話しもでき、得難い経験をしました。先生がはじめて来日されたときは勤務校に宣教師として来られたそうです。一度帰国されたのですが、私が専任になってすぐに、今度は英米詩の専任教授として着任されました。リンフィールド大学との交換留第一期生が、その日のもう一人の仲間のKさんです。留学先ではE先生の研究室のお手伝いをしつつ、お世話になったそうです。

 Kさんは私が教えた最初の学生で、大学院では中世英文学を専攻しましたので、海外研修で一年留守をした時には、学部の専門科目と専門ゼミを彼女にお願いしました。彼女のクラスは学生にも人気がありましたので、私が復帰してからも、専門科目の一つは彼女にお願いすることにしました。E先生は二度目の来日以降、アメリカにお帰りにならず、そうしたご縁で三人は時々ランチやディナーをご一緒して楽しいひとときを過ごしていたのです。

 E先生は、文学、哲学、神学を学ばれ、学識の深さはもちろんですが、いつも機嫌のよいお顔を見せ、気さくでユーモアに溢れた方でしたので、先生を知る人はみなお会いするのが楽しみでした。私が英文論文の英語を見ていただいたのは数知れずです。先生に赤を入れていただいた英文は、声に出して読みますと、息継ぎが楽で、しかも音がきれいで、おまけに意味が更に良くなるのです。さすが詩人です。単なるネイティブ・チェックではこうはいきません。本当にお世話になりました。先生のおかげで、論文を書くときの言葉や、これを読み上げたときに意味が通じるかどうかと言ったことにも心を向けることができるようになりました。その意味で、Kさんも私も、E先生の生徒なのです。 先生のおかげで、退職後に朝日カルチャーセンター立川でクラスを持つことができたのですから、心からありがたいことです。

 その様な次第で、予習をしているうちに4月になり、クラスが始まりました。初対面というのは、どの場面でも緊張しますが、ありがたいことに受講生の皆さんはすぐに私を受け入れてくださいました。どのクラスも受講生は3人から5人です。ほぼ私と同世代ですが、小説を読むクラスは、なんと、私が最年少です。最年長は90歳に手が届くのではないかと思います。このクラスは、総合英語の初期から通っておいでで、30年以上通っているという方もおいででした。 

 どのクラスも、真面目で熱心で、勤勉であることは言うまでもありません。読みについても踏み込んだ内容に関する質問や感想が出てきました。総合英語の例文一つでも、読みについて、訳の言葉について鋭い質問が出てきました。小説を読むクラスでは、内容を深く読む姿勢、文章の構文を理解しながら、なおかつ日本語として通る言葉を選ぶ努力に嬉しい驚きを覚えました。ここまでに鍛えてくださった、お会いしたことのない前任者に、心から尊敬の念を覚えました。

 前任者は受講生を大変しっかり教えられたとお見受けしました。後で伺ったことですが、センターではカリスマ的な魅力を持つ人気のある先生でいらしたそうで、ひと頃はいくつクラスを増やしてもすぐに一杯になってしまったそうです。皆さんは「厳しかったです」と、口を揃えておっしゃいますが、同時に、心から敬愛しておいでであることもわかりました。おしゃれで、歌が上手く、チャーミングな方だったようです。ともかくも、私は私なりに、及ばずながらも、可能な限りの努力はしたいと思いました。

 このような次第で、受講生の真面目さ、勤勉さに助けられ、私の緊張はほぐれ、今では楽しみの時間となりました。年齢が近いせいか、単なる購読や総合英語の授業で終わらないところも楽しいことでした。文章の読みは読み方は場面設定で訳語も異なります。小説ならばどの設定状況かを考えて訳語を選ぶ、総合英語の例文ならこの例文にあう状況はどのくらい多く考えられるかといったことまで考えることができます。こうした課題を一緒に考えることができるのは嬉しく楽しいです。大学でこそこうした授業ができるなら・・・と思ったことでした。

 何よりも嬉しいのは、試験も成績もないことです。学生時代は、先生は試験を受けなくて楽でいいな、と思ったものですが、教師になって何が嫌だといって、試験と成績をつけることほど嫌なことはありませんでした。今のクラスは本当に楽しく幸せです。目下、緊急事態宣言で休校ですが、皆さんとの再会を待ちつつ、予習に励んでおります。