柿の若木、2021年

 ああ、一年経ったなぁ、と思ったのは、庭に鉢植えで置いてある柿の若木です。これは、家を改築することになり、増築部分にあった甘柿を斬らざるを得なくなったので、せめて子孫を残そうと思い、秋に実った種をヨーグルト容器にいくつか植えたものです。年を越して春になりましたら双葉が出て来ました。植木屋さんの話では、甘柿の種を蒔いても出てくると渋柿になってしまう、甘柿にするには接木が必要だそうで、「そっかぁ、」と思いました。容器の中の木は元気に育ち、やがて直径2ミリ、高さ10センチくらいになりました。頼りない細い棒でしたが、せっかくここまで伸びたのですから、取りあえずそのまま様子を見ることにしました。

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2019年の冬にヨーグルトの容器に蒔いた種が年明けてしばらくしたら双葉が出てきました。これは素晴らしい、と喜んで鉢に植え替えました。夏の初め、小さな若葉が出てきました。そして冬、葉は落ちて10センチかそこらの細い棒になったのです。

 改築が終わったのはその年の秋の終わりで、容器の中の木を小さな鉢に移し、庭に置き、雑草と紛れないように側に柿の木よりずっと太く高い棒を立てました。こうして冬を越しました。さて、四月も終わりの頃、ふと見ると、昨年ブログで書いたように、柿の若木が育っていたのです。このまま大きく育って、渋柿になるならそれでもいいかなと思って、折々に様子を見ていました。

 

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これが昨年四月に撮った写真です。小さな棒きれがこんなに育ってと、いたく感激したものでした。

 さて、コロナと共に日々は流れ、気がつけば一巡りしていたのです。そして、この4月末、あの若木が、背の高さも倍になっていたのです。60センチくらいに伸びています。葉もたくさんつけて、幹と呼んでもいいくらい、しっかりした若木になりました。

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これが今日の姿です。写真が小さいので、同じくらいの背に見えますが、倍近い高さと大きさです。背後にあるのは咲き乱れる紫蘭です。紫蘭は去年も今年も変わりません。

 この姿を見て、もしかしたらこの木を接木にして、もう一度甘柿を育てることができるか、今なら間に合うかもしれない。そうしたら、二代目甘柿の実るのを見ることができるかもしれない、その実は一代目と同じ味かしら、と想像がふくらみました。  

 この一年、家に閉じこもる日々で、居間から庭を眺めることが多い日々でした。柿の木も臘梅も山椒もちゃんと緑だわ、と安心していたのですが、一旦家に籠もるとだんだん外には出なくなりがちの日々でした。こうしているうちに動けなくなってしまうのかもしれないと、少々怖くなりました。世の中に何が起ころうと、草木はちゃんと時の刻みに従って生きている証を身体一杯に実現しているのですね。 

 人間の、というより私の怠惰な心身に反省し、気を取り直して歩こう!と思ったことでした。