孫の運動会

コロナのため、多くの学校行事が中止のやむなきをえず、運動会も中止、と聞いていたのですが、先日、小学校三年になる孫の運動会に出かけて行きました。例年のような一日がかりの大運動会ではなく、各学年がそれぞれ別個に授業参観を利用して行う小運動会です。

冬晴れの青い空の下、さほど寒くもなく、運動会には丁度よい日柄です。プログラムを見ますと、ご挨拶、準備運動、整理運動のほか、4つか5つのダンスや競技が予定されているようです。感心したのは、3クラスの子どもたちがどの辺で競技をするかという見取り図があり、それぞれの競技でそれぞれの子どもは何番目に出場するか、保護者が分かるように、「〇〇組の〇番目」と子どもの手で記されていることです。保護者が一所に固まらずにわが子が見られるようにとの配慮です。保護者が校庭に引かれた楕円形の白線の外側に立っても密集しない工夫です。応援は掛け声ではなく盛大な拍手です。

最初の競技は、3人一組で長い棒を握って走り、コース上に置かれたコーンをまわって次のグループに繋ぐリレーです。距離は短いのと長いのと二種類あります。短い距離のグループは最初のコーンをまわって戻ります。長い距離のグループは最初のコーンを二度まわってその先のコーンをまわって戻ります。長い距離を走るグループの場合、コーンをまわる時、棒の内側の子どもは外の二人が外側に広がらないようしっかり棒を掴み、足を踏ん張って堪えます。一番外側の子は距離が多くなる分、せっせと速く走らねばなりません。短い距離を走るグループの数は決っていますが、何番目に走るのかは3チームバラバラで、どこに紛れているか分かりません。なかなか知恵のいる競技で、大変面白く見物しました。

徒競走は80メートルです。去年は40メートルだったように思います。5人ずつ走ります。例年、何人か、とにかく駆けっこの速い子はいるものです。手足の動きが違うのです。万年ビリか後ろから2番目だった私にとって、駆けっこの速い子は憬れです。ともかく最後まで走れれば良いのだから、とずっと言われ続けてきたものでした。同じ血筋を引いている孫もお世辞にも速いとは言えないのですが、最後まで走れたから上々出来です。最後のグループが走り終わったかと思った時に、一際大きな拍手が聞こえてきました。車椅子の子が一人、一生懸命走っているのです。頑張って走り、大拍手に迎えられてゴールしました。ゴール後、顔を真っ赤にしてにこにこしていた爽やかな表情が心に残りました。

ダンスの次は玉入れです。車椅子の子のクラスは、他のクラスよりも人数が少ないようです。そこでまた車椅子の子どもの出番です。背の高さに合わせた玉入れのネットに中に、10個か20個か30個かの玉を入れます。ネットの中に入るたびに拍手が湧きおこります。これが人数の少ないクラスの分です。3クラスですから、総当たり、2回の玉入れです。2回の玉入れの数の合計点で順位が決まります。うまい具合に、ほぼ同じくらいの玉がはいり、二つのクラスが同点、もう一つのクラスも小差で順位がつきました。こうした工夫の仕方があるものだと感心しました。

途中、水飲みタイムやトイレタイムがあり、最後にキックベースという、野球に似たルールで大きなボールを蹴って遊ぶゲームがありました。1時間目と2時間目を使った運動会は気持ち良く終わりました。小運動会の準備をなさった教職員の方々のご苦労と心配りに深く感動しながら帰りました。

何より気がついたのは先生方の統率力の見事さと子どもたちに向ける眼差しの温かさです。子どもたちは、丸くなったり、グループに分かれたりと、先生の声でキビキビと動きます。が、統制が行き届きすぎていないところが、その匙加減が、絶妙です。どの子も先生の指示に従いますが、多少のズレや遅れは許容の範囲ということのようです。これもなかなかできないことです。この時期、感染者を出さないように、子どもたちの楽しみを実現させようと、(子どもたちはそこまで見えないことでしょうが、)ずいぶん大変な努力をされたことと思います。三々五々と校門をでる保護者の顔はみな晴々と嬉しそうでした。

孫の行っている区立の小学校は、私鉄の駅の踏切を越えたところにあります。校門の前は歩道がなく、片側一車線の両方通行の道路です。バスもトラックも走り、交通量も多い場所です。教職員の方々が、踏切や校門の前に出て、細かく気も心も配っていてくださるおかげで交通事故も出さずにすんでいます。朝の一斉登校の時は、踏切の前で駅の階段を登り、踏切を越えてから階段を降りて通学し、踏切を渡らないようになっています。帰りは学年別々ですので、たまに見ておりますと、走ってはいけないと言われていてもはしゃいで走り出す子もいます。それが子どもというものなのでしょう。事故にならないのは、近所の商店の方々、その道を通る運転手の皆さんも温かい目で協力してくださっているからでしょう。何かの折りに迎えにいくときなど、はらはらしながらも、この子どもたちが皆無事に卒業していけますようにと思います。

日頃から学校の取り組みや努力には頭の下がる思いでしたが、このたびの運動会の様子に、これこそ教育と深く感じ入ったことでした。