秋の日

 このところ、昼間は暖かくても、朝夕めっきり寒くなってきました。夕焼けも暖みのある赤から少し冷たさを感じさせる鋭い赤になりました。月もくっきり、皓々ときれいです。毎年しみじみ思うことですが、東京の秋から冬にかけての日々はなんときれいなのでしょう。散歩の道々で見る垣根越しの柿、紅葉、花水木、満天星、並木の欅、銀杏。それぞれの紅葉、黄葉は微妙に異なり、赤から黄緑までの色とりどりが美しく、満ち足りた心持ちになります。

 コロナ騒ぎの後、5回目のワクチンを接種しましたら、副反応で熱が出て、今回は39度を越えました。熱は出るのも急なら下がるのも急でした。副反応の性格かどうかはわかりませんが。これも個々人によって変わるのかもしれません。

 熱が下がった雨上がりの朝、庭にたくさんの柿の落葉が散らばっていました。

テラスも庭も一面に柿の葉が落ちていて、枝の葉と地面の葉がまるで大きな布地のプリントのようです。

 

 赤くなった葉が枝に残り、庭に落ちた葉が地面を覆う風情はなかなか良いものです。遠い昔、校庭に隣接する雑木林を友達と話をしながら、たくさん積もった落葉の中をカサコソいわせながら歩いた日々を思い出します。庭は掃かずに落葉でいっぱいのままが好きです。残り少なくなった木の葉に陽の光が射し、透けて見えるようです。葉と葉の重なったところと一枚の葉の上で遊ぶ光と影、どの葉もきれいでとっておきたくなります。落葉焚きの匂いが漂ってくるような気もします。気持の良い秋日和です。

 この木もかつては秋になると枝もたわわに大きな実がなったものでした。200個以上の実がなった年には、たくさん、たくさん吊柿にしたものでした。去年、今年と花芽が次々と落ち、せっかく付いた実も次々に落ちて、この分では今年は全滅かもしれないと思うほどでした。それでも今年も葉が落ち始めた頃、僅かですが実がついているのを見つけました。よく頑張ったね、もう少し一緒にがんばろうね、と老木に感謝し、畏敬の念を覚えました。数は少ないながら大きな赤い実が見えます。渋柿ですから鵯もまだやってはきません。真っ赤になったところで収穫です。いくつかは熟柿にし、いくつかは渋抜きします。後のいくつかは野鳥の冬のご馳走に残しておきます。

 

一本の枝に付いた実です。前の日に降った雨の露を乗せて枝にしっかり付いています。これはそのまま残しておきましょう。鵯が歓喜の雄叫びを上げて飛んでくる様子が目に浮かびます。

 南側の庭は娘の家を建てている間も資材置場になっていましたので、いくつかの庭木のほかは放ったらかしになっていました。家人の両親が元気だったことは、四季折々に庭木の花、花壇の草花が四季折々に目を楽しませてくれました。家の方もようやく落ちついたので、そろそろ庭に花や野菜を植えようということになり、園芸店に出かけました。大きな園芸店で圧倒されてしまいました。

 店内をまわりながら、店内の広さに惑わされず、我家の庭の規模やできることを思い返し、改めて選択にかかり、納得にいく苗を手に入れることができました。

チューリップの球根を植えましたが、花が咲くまでの間、淋しいので、花を植えました。シクラメンやストックや小菊の類です。三色菫も植えたのですが、向こう側でみえません。おまけに上手にきれいな花盛になってませんが、何とか。この花が終わる頃にはチューリップが出てくるだろうと、期待に胸がふくらみます。

 最初のプランターに分葱を植えました。これでおいしいヌタができる筈です。その隣には台所で水栽培をしていた三葉を植えました。きれいに写真が撮れず、残念です。丸い花鉢には三色菫、ストック、シクラメンなどを植えました。花の下にはチューリプの球根が眠っています。この花が終わる頃にチューリップが茎を伸ばし、葉が出て蕾ができてという予定です。かつて毎年、春になるとクロッカスが咲き、チューリップが風に揺れていたことを思い出し、赤、白、黄色のチューリプの球根を買ってきました。

 

真中のヒテンス、というよりハッピーエンパイアの両側にあるのはストックとシクラメンです。ストックは少し曲がってしまいましたが、少しずつ真っ直ぐになっていくような気がします。小さいシクラメンもなかなか可愛いです。

 

 めぼしい物が手に入り、満足、満足で出口に向いました。帰りがけに目に留まったのが黄色い鉢植えです。たくさんある花々のなかで特に目立つ花ではなかったのですが、家人が「これが良い」と言うので買ってきました。ヒテンスという名前ですが、初めて知る名前です。その下に「ハッピーエンパイア」とありましたので、ああ、なるほど、ハッピーなのね、と納得しました。家のテラスに飾ってみるとなかなか良いものです。一つでは淋しそうなので、両脇にシクラメンとストックを置いてみました。

 植えたばかりの花や苗がお日様の下で気持ち良く日向ぼっこをしています。やはり、花のある生活は良いものです。先の楽しみを心に思いながら花や野菜の苗を眺めたとい秋の日でした。