11月

 昨年も天候不順が続き、季節の移りもおかしいと感じたのですが、今年は昨年にもまして、長い、長い、そのうえ耐えがたいほどの暑さに苦しんだ夏が続きました。台風が来るのが遅いと思っていたらいきなり大勢の台風が押し寄せ、それでなくても集中豪雨に見舞われ、各地は為すすべなく苦しい夏の後半でした。秋らしい秋を味わう暇もなく、寒暖の差、天候不順が続き、夏と秋がゴチャゴチャにやってきて、着るものにも困り、心身ともに疲れ、体調を崩す人も多かったようです。

 そしていきなりの冬到来です。「きっぱりと冬が来た」で始まる詩を思い出しました。今週に入り、急に気温が下がり、ついこの間まで緑々の柿の葉もようやく色づきはじめました。緑色に黄色や橙が混じり、やっと秋の柿の葉になりました。柿の実も綺麗なオレンジ色に育っていました。例年よりは一ヶ月くらい遅れているように思います。

庭一面を覆う大きな柿の木に、所々、赤い実がなっています。今年の冬の鳥さんたちへの贈り物に間に合いそうです。

 樹齢100年以上の老木は、私がこの家に住むようになってから、幹が二回りほど太くなったように思います。渋柿ですが、渋抜きをしたり、熟柿にしたりすると、お店で求めたものよりおいしくなります。たくさん成った年には吊し柿にします。この吊し柿が大層美味で、毎年楽しみにしているのです。季節が順調に進めば、良い吊し柿になるのですが、去年、今年のように不順で、しかも暖かい日と寒い日がゴチャゴチャに来ると、おいしい吊し柿にはなりません。穏やかな晴れた昼間と湿気の少ない寒い夜が交代に来る、そういう日が続くと、それはそれはおいしい吊し柿になるのです。

 試しにと、五つだけ吊し柿にしてみたのですが、雨が降り、湿っぽく、気温の高い日もあるとなると、柿には過酷なのかもしれません。うまくいくかしらと、心配しながら見ています。長い年月にはうまく実がつかない年もあったのかもしれません。けれども、近年の天候不順や気候変動は、地球規模で問題になっている温暖化と関わりがあるかもしれません。海水温度の上昇も、特に三陸沖あたりは北極海にまさる上昇で、深刻だと聞きます。待ったなしの危機的状況にあるのだと思います。それが、柿一本にも及んでいるのかもしれません。

 個人でできることは少ない、でも精一杯努力したい。一方で、世界の分別と英知を結集し、解決に向かってこれまで以上に実践してほしい、と思ったことでした。