めったに衝動買いはしないのですが。
9月下旬に、毎年必ず行くことにしている江戸指物師展に出かけました。この展示会は長いこと谷中で催されていたのですが、しばらく前、展示場の持主が老齢で閉店したので、日本橋界隈に場所を移しました。ここ数年はギャラリームサシ銀座で展示されています。
展示品はどれも丹念に精巧に美しく作られています。三段小箪笥など、一つの引き出しを開けて閉めますとほかの引き出しがスウッと開いて、うっとりします。縦型の箱の縦半分の扉を開きますと、裏側が美しい細工や絡繰りが施され、その見事さに溜息が出ます。針箱、小箪笥、文箱、和机、楊枝入などなど、木目の美しさも塗りの見事さ、品の良さ、いつまで見ていても飽きません。
その中で、始めに目が行ったのは美しい木目の文箱です。桑の材だそうです。象牙色に近い白い桑だそうです。次に目が行ったのがその隣にあった文庫本入です。
白に近い櫤材と木目の揃った杉材でできた白木の文庫本入です。展示されている作品は大体が和の生活に似合うものが多いのですが、文庫本入というのがいいではありませんか。私は一目で魅せられてしまったのです。
毎年感動のうちに鑑賞して終わるか、楊子入れや小さな小箱などを買って帰るのですが、このたびは動けなくなってしまったのです。私にとっては分不相応な贅沢なものでしたが、まさに衝動買いをしてしまいました。後で知ったのですが、これは案内状の写真にあったものでした。
展示期間が終わったら改めて連絡しますというので、送ってくれるのかしらと思っていたところ、数日前「お持ちします」というので恐縮しつつ待っていましたが、めでたく今日届きました。おいしい羽二重団子のお土産と一緒に。「嫁入り先まで送り届けたい」ということだったようです。
早速私の部屋に運びました。机の隅に置く予定でしたが、娘がやってきて「えぇ!こんな綺麗なものを隅に置くなんて・・・」、さらに、「ホントに文庫本いれるの?綺麗なものを飾ったら?」などと申します。「もちろん、文庫本いれるわよ」と思っていますが、ちょっと綺麗なものも一緒に飾るのもいいな、と思っています。