娘の家を裏庭に建てようという計画が着工する運びになり、まずは、裏庭の整理から始まりました。何十年も役に立ってくれた木造の物置、猫の額ほどの家庭菜園、塀際の生垣や植木、土留めなどが取り払われることになりました。というわけで、とりあえず、物置から救出するべき物を運び出しました。家人の祖父母が愛用していた大きな火鉢や釜。釜は山に持って行って竈を作り、これでご飯を炊いてみようと思います。思えば18歳で上京するまで、里の家では、竈にかけたお釜で焚いたご飯でした。子どもたちの背丈を測った木製の身長計も出てきました。150㎝まで計れます。これは孫にあげましょう。後から、後から、懐かしい物が次々出てきますが、この先、手元に留めておける物は、残念ですが、少ないです。
次に、物置の傍の、鳥の落とし物のお陰で、10年ほど前から見事に繁っていた千両を摘みました。今、たくさん実をつけて、それはきれいです。ありったけの枝を摘んで、いくつかの花瓶に活けました。今まで、お正月には千両も万両も庭から採ってきたものでした。次のお正月まではもちろん持ちません。今までありがとう、とお礼を言って写真に撮りました。
それから畑の最後の収穫です。盛りを過ぎたとはいえ、まだがんばって実をつけているミニトマトと茄子を採りました。食べごろの実は少なく、多くは熟するのを待っていたのです。こちらの都合で無理矢理の収穫になりました。青いトマトも茄子も料理をすれば食することができることがわかりました。トライしてみようと思います。来年からはプランターですかね。
そして垣根です。垣根の蔦は80年のほどの時の流れの中で根も幹も太くなりました。伸びた太い根が土留めのブロックを崩しかけている部分もありました。万一、地震や大雨などで崩れて大事に至ってはと案じてもおりましたので、この際きちんと作り直すことになりました。その結果、生垣は取り払われることになりました。今まで一緒に暮らしていた垣根ですから胸が痛みます。
古い時代とともに、長く馴染んださまざまの物と、今日こそは永の別れです。たくさん、たくさんの思い出は心に残っています。写真にも撮りました。写真を見なくても、目をつぶればきっと在りし日の姿を思い出すことでしょう。今までありがとう。忘れないよ、ありがとう。