14人の怒れる・・・

今朝読んだ新聞、正確には昨日の夕刊です。(4月以来、コロナウィルス予防だという家人の言に従い、朝刊は夕方に、夕刊は翌朝読む習慣が出来ました。)ニュースそのものはパソコンからでもTVからでも知ることが出来ますから、全く不自由はないのですが、紙ベースで文字を読まないと、読んだ、という気がしないのです。 

さて、昨日の夕刊の特集ワイドは「ロッキード世代の意地―14人の怒れる元検事」という見出しでした。「検察庁法改正 政権に不都合な捜査阻止が狙いと確信 ルイ14世の亡霊 権力暴走許せば国民が被害に遭う 『地獄でも進むしかない』上司の気概 胸に刻んで」と記事を要約する見出しがありました。 

COVID19で世の中が落ちつかないしばらく前の日々、一方では検事長の停年延期が問題になっていることは知っておりました。「ロッキード以来」という文言も見聞きしました。ロッキード事件は当時、ニュースなどで連日連夜報道され、「ピーナッツ」とか「ピーシズ」とか「コーチャン(でしたかね)」などという言葉が飛び交っていました。1976年7月、私は臨月でのうのうとテレビでオリンピックを見ていました。白い妖精のようなコマネチの演技を見ているときに陣痛がきて病院に駆けつけました。お産を済ませて部屋でやはりのんびりしていたある日、元総理大臣が逮捕されたという緊急ニュースを見ました。本当に、本当に、吃驚しました。 

あれから40数年経ちました。折々の多様な災難のたびに、「家貧しくして孝子顕れ、世乱れて忠臣を識る」という諺を思い出しました。典拠はわかりませんが。「家貧しくして」はともかく、あちこちで事が起こるたび、助け合う彼の地の方々の頑張りに感動しました。助っ人が駆けつけ、ボランティアや後方支援のあり方も、災害のたびに進歩していく様子に胸打たれました。そうした姿は後方支援予備軍をも鼓舞し、立ち上がらせてくれました。この方々は、正確には「孝子」という原意からは離れてしまうような気がします。ですが、一般の人たちの間で個々の方々が自ら励む姿に、なぜかこの諺を思い出してしまうのです。

一方「忠臣」については、私の目に見える形、私の価値観にとって、民やその地域の人々にとっての「忠臣」と受けとめられる具体的な形は、なかなか見えてきません。それぞれが考える「忠臣」の意味やイメージが異なるためかもしれません。高山の麓にいる者と、中腹にいる者と、頂上に立つ者にとって、国の形もあり方も異なり、見えてくる「忠臣」の姿も異なるのかもしれません。「主権在民」とか「平等」というのも、小学校の時に習ったような単純なことではないのかもしれません。民が困っているときに仁徳天皇が「民の竈は・・・」と心配した話は、政治家の理想的なあり方として心に残っています。三年も税金を猶予したら、国が持たなくなってしまうだろうとは、政治音痴の私でもわかります。ただ、仁徳天皇の心を忘れないで政治を行ってほしいなぁ、とは思います。同時に、すべてを政府や行政に責任を負わせていいものではないとも思います。自助努力や自ら動くことは、何時も大事なことだと思います。こうしたことを私が言うのは口幅ったいことで、恥ずかしいことですが。 

今回の検事長停年延期については、どこかおかしいと思っていました。このことの他にも、これまで、いくつかのことが話題に上り、こんなことがあり得るのだろうかと思いました。なぜこのようなことが起こり、通ってしまうのだろうかと、胃の腑に落ちないことでした。今回、これが通ってしまうようなら、この先が危ういなと思っていました。そんなときに「朕は国家である」という言葉に関連して、「私はルイ16世ではない・・・」の言を耳にし、「あれ、これルイ14世ではなかったかな」と思いました。 

言い間違いそのものに難癖をつけるつもりはありません。(漢字が正確に読めて、言葉に躓かないほうが良いに決まっていますが、他人様のことはいえませんし、)漢字が正確に読めなくとも、言葉で躓いたとしても、真意が清廉であるならば、その真心は通じると思います。ルイ14世であろうと、ルイ16世であろうと。言葉そのものの過ちではなく、問題は、事に向き合う姿勢の核に潜むところにあるのだと思います。元検察トップらが「検察庁のあるべき姿に重大な・・・」という意見書を出したニュースは、誰がというのではありませんが、朧気ながらに期待していたことではありました。にもかかわらず、正直、全くの驚きでした。この国にも自浄作用はまだある、と思いました。ご本人の不徳のいたすところもあり、この法案は継続審議になりましたが。  

「14人の怒れる・・・」は、「12人の怒れる男」というテレビドラマ(1954年、後映画化)から採ったのでしょうが、陪審員の話だったと思います。非常に良い見出しであったことと、記事の内容に胸が熱くなりました。「世乱れて・・・」というか、「政治乱れて・・・」というか、忠臣が現れたかな、と思いました。