蚊遣

緑深くなり、日差しも強くなり、気温も高い日が多くなり、ちょっと遅ればせながら、夏も近づく八十八夜・・・です。立春から数えて88日ですから、5月2日頃でしょうか。空も青く、風も爽やかに香り、言うことのない良い日和なのですが、この先々、困ったことがあるのです。

というのは、蚊の猛襲です。家の周囲一帯は木々と草々がいっぱいで、緑が多いといえば聞こえはいいのですが、蚊も多いのです。早朝はまだいいのですが、9時を回ると、どこからともなく蚊が入りこんできます。網戸をくぐって、勝手口から、玄関から、しっかり締め切っているつもりでも、いつの間にか、蚊の、例の、キーンという音が聞こえてきます。寝ているときに耳元でキーンと聞こえたら、もう寝てはいられません。刺されたのに気づかず、朝になって瞼や耳朶が赤く膨れていますと、痒くて、痒くて、眠れなかった夜を恨めしく思うほかありません。

なぜか我家で蚊に刺されるのは私なのです。皆が涼しい顔をしているとき、あの痛痒さにイライラしながら時を過ごす苦痛は、もう、なんと言ったらいいのやら…。しかも我家の蚊は衣服や靴下の上からでも、平気で刺すのです。黒と白の縞のあるヒトスジシマカという藪蚊なのだそうです。若い時は赤くなってもしばらく我慢をすれば済んだのですが、近年は刺されたところが赤く膨れ、時には水疱までできます。間違って掻き壊そうものなら、10日以上痛みと痒みがとれません。

というわけで、部屋という部屋には蚊取を用意するのですが、これがなかなか期待するほど効目がありません。困ったことです。今年は、網戸や玄関に下げる虫除けを購入してみました。でも、これは主にユスリカたちのためのようで、蚊には有効とは言えないようです。まあ、例年通り、ベープを用意し、ムヒを用意し、蚊に備えてはみたのですが。蚊に刺されやすい妹のために蚊の研究を始めたという高校生がいましたが、その後研究はどうなりましたかね。

今年は、もう一つ、こんな蚊取を用意してみました。昔、ブタさんの蚊遣があったのを覚えておいででしょうか。除虫菊から作られた渦巻型の蚊取線香です。草むしりをするときは、金属の蚊遣器に入れて腰にぶら下げたものでした。このタイプの蚊取は日本特有だと思っていたのですが、ローマでも見つけました。10数年前、まだマラリアが発症するというイタリアでは、蚊に刺されるのは大ごとです。イタリア語で蚊はザンザーラというのですが(この名前は、何とも言えず、イタリアの蚊にぴったりの響きです)、日本の小さい蚊と違って、2、3センチくらいの大きさで、茶色です。ちゃんと目まで見えます。目が合うと、邪悪な眼つきをしてニヤリと笑うような気がします。素早く飛ぶのではなく悠々とゆっくり飛びます。しかも逃げ足はやたらに早いのです。蚊を駆除するのに有効なのが、この渦巻式の蚊取線香です。ただ、この蚊取、とんでもない勢いで、日本のゴキブリ駆除のアースレッドとかバルサンのように煙を出します。もしかして、線香をたいている間は部屋から出るというものだったのかもしれません。とにかく、イタリアの蚊に瞼でも刺されると2週間はお岩さん状態です。

ブタさんの蚊遣も可愛らしくて好きですが、今年用意したのは直径15センチ、高さ12センチ位の七輪の上に魚焼きの網を乗せ、その上に魚が二尾乗っているという趣向です。線香の方はごく当たり前の緑色の渦巻状の線香で、七輪の下部に収まっています。さて、これで今年はうまく蚊を撃退できるでしょうか。乞うご期待!

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この夏、がんばって蚊を撃退してくれるはずの蚊遣です。夏の夜、こんな風に魚を焼きながらご酒を…なんていいですねぇ。